近年、幅広い業界で活用が広がっているEMS。製品のライフサイクルの短縮化によって設備投資のリスクが大きくなり、さらに人材不足も深刻化する現状において、EMSへの注目度は年々高まっています。EMSの利用を検討している企業も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、近年注目されているEMSの特徴やメリット、OEM・ODMとの違いをわかりやすく解説していきます。
EMSとは

まずは、EMSの概要やEMSを取り巻く現状および課題についてわかりやすく解説します。
EMSとは
EMS(電子機器製造受託)製造とは、「Electronics Manufacturing Service」の略称で、メーカーから電子機器の製造を受託している企業およびサービスのことです。
具体的には、製品設計から試作、電子部品などの調達や製造、品質管理などを委託元の企業に代わって行います。
EMSを取り巻く現状と課題
近年EMSに注目が集まっている背景には、日本の製造業が抱えている課題が深く関係しています。
リーマンショック以降、日本の製造業の間では、コスト差別化のために生産拠点の海外移転が進みました。その後、新型コロナウイルスの感染拡大や、地政学的なリスクの高まりを受け、海外拠点のリスクが問題視されるようになり、国内回帰の動きが見られるようになります。
また近年では、消費者のニーズの多様化や急速な技術発展により、製品のライフサイクルの短期化が進んでおり、製造業はその対応に迫られています。コストと品質のバランスの適正化が今まで以上に重要となり、どちらを重視するのか、戦略的な判断が迫られている状況です。加えて、人手不足による人件費の高騰や設備の老朽化も進んでおり、経営資源をいかに有効活用するか、いわゆる「選択と集中」が求められています。
こうした背景から、EMSに注目が集まっているのです。EMSを利用してノンコア製品の生産を外部に委託すれば、企業は自社のコア製品の開発に専念することができます。とりわけ国内に拠点を置くEMSなら品質も良く、先述した地政学的なリスクも回避することができるため、サプライチェーンの安定化を実現可能です。さらに近年では、EMSの対応領域は拡大しており、単なるものづくりとしてだけでなく、サービスとしても進化を遂げています。
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EMSとOEM・ODMの違い

OEM、ODMは、EMSと似た文脈で使われることが多いものの、その定義は異なります。具体的な違いは、以下の通りです。
OEMとの違い
OEMは、「Original Equipment Manufacturing」の略で、製品の生産のみを外部に委託する形式のことを指します。企画開発や設計部分に関しては委託元のメーカー側で対応します。
一方のEMSは、委託先の電子機器設計開発・製造に特化したサービスです。OEM企業は、電子機器に限らずさまざまな製品の製造に対応しています。製品製造の種類や対応範囲などが、EMSとOEMの主な違いです。
ODMとの違い
ODMは、「Original Design Manufacturing」の略称で、設計・開発・製造工程を外部に委託する形式のことです。生産だけを委託するOEMと違い、ODMは受託側の企業が設計・開発まで請け負います。
対応プロセスについては、基本的にEMSと違いはありません。ただ、EMSの対応領域はサービスによって大きく異なります。生産だけを委託するOEMの形式のものもあれば、設計・開発も委託するODMの形式のものもあります。
EMSの流れ
基本的なEMSの流れは、以下の通りです。

1. 製品の設計
仕様書やヒアリングをもとに製品の回路やソフトウェア設計、機構設計などを行います。
2. 部品の調達
製品の製造に必要な電子部品や基板などを調達し、品質管理を行ったうえで製造に入ります。
3. 製造、基板実装および組み立て
部品を調達したら、基板実装や製品の組み立てを行います。
4. 評価・試験
製品の組み立てまで完了したあとは、仕様通りに稼働するかどうかテストを行い、性能評価や修正を行います。
【委託企業側】EMSのメリット

では、EMSにはどのようなメリットがあるのでしょうか。まずは委託側の観点からメリットをご紹介していきます。
高いコストパフォーマンスで高品質な商品を製造できる
EMS企業に製造を委託すれば、自社で製造するのと同程度のコストで、より高品質な製品を効率的に製造することが可能です。
EMS企業は、さまざま機器を製造するための設備を備えているうえ、受託によって培ってきた品質管理などの幅広いノウハウを有しています。
これらを活用することで、高品質な製品を効率的に生産できる体制を実現することが可能です。
生産の柔軟性を高められる
EMS企業に製造を委託すれば、短期間で生産量を増減させることも可能です。市場の需要変動にも迅速に対応できるようになり、柔軟性のある生産ラインを実現できるでしょう。
また、複数の製品ラインを同時に運営することも可能なため、新製品の導入もスピーディーに行えます。
効率的に設備投資を行える
EMSを活用すれば、設備投資にかかるリスクを抑えることも可能です。
設備投資には、リスクがつきものです。製品の売上次第では、設備投資の費用回収も難しくなり、業績に大きな影響を与えてしまいます。加えて、消費者のニーズが多様化している現代では、製品のライフサイクルは短くなりつつあり、スピーディーに変化する社会への対応が求められています。リソース不足で悩む企業にとって、設備投資のリスクはさらに高まっている状況です。
一部の商品の製造をEMS企業に委託すれば、自社のリソースを量産品の製造や商品の開発に集中させられるため、効率的な設備投資を柔軟に行えるようになります。加えてEMSを利用して生産拠点の分散を行えば、リスク分散にもつながります。
【受託企業側】EMSのメリット

EMSは、受託する企業にとっても大きなメリットがあります。
技術力の向上につながる
EMSの受託企業におけるメリットのひとつが、技術力の向上につながる点です。
さまざまな企業から仕事を請け負うためには、多種多様な製品および部品、構造に関する知識や製造技術が欠かせません。EMSで電子機器の製造を受託することによって、委託元の企業が所有している技術などを共有してもらい、蓄積することができます。
また、技術力が向上すれば自社ブランドの製品を開発できる開発力も身につくでしょう。中長期的にメリットの大きな事業といえます。
部品の大量発注によるコスト削減
EMSでは、共用部品を大量に発注する機会が多いため、調達コストの削減も目指せます。EMSの受託企業は、さまざまな製品の製造を請け負います。共用部品を発注する機会は多く、大量発注が必要な場面も出てくるでしょう。大量発注の際はそれに伴う割引を受けられる可能性があるため、製造コストの削減にもつながるのです。
EMSはWILL ONEにご相談を

WILL ONEは、長年人財サービス事業を通じて日本のものづくりをサポートしてきたウイルテックと、電子部品・デバイスの卸売やEMS事業のノウハウを持つデバイス販売テクノ、照明メーカーとして70年以上の歴史を持つホタルクスの3社の知見や技術力を融合したEMSソリューションです。
国内一気通貫でスピーディーな対応
WILL ONEは国内一気通貫で製造を行っているため、高品質かつスピーディーな対応が可能です。国内に4つの生産拠点を持つ当社は、回路設計やソフト設計をはじめとした設計から部品の調達、基板実装、組み立て、試作・評価などをすべて国内の拠点で対応しています。
また、OEMではコストの差別化が難しいことから、コストを削減するために海外生産を検討している企業も少なくないものの、海外拠点には地政学的なリスクなどが伴います。生産拠点を国内に持つWILL ONEなら、そうした地政学的なリスクを回避できるうえ、設計から見直すことでコストの削減も見込めます。
小物製品から大物製品まで生産可能
小物製品から大物製品まで生産できるのもWILL ONEの強みのひとつです。
グループには、約6,000名の人財が在籍し、生産体制の変動に応じた柔軟な体制構築に対応しています。非コア作業に関しては協働ロボットなどを活用し、生産ラインの自動化・省力化を実現。試作から量産、多品種変量生産など、お客様の要望に応じて柔軟に対応することができます。
産業用電子ブザーやトラック用電子基板をはじめとした小物製品から、エレベータや介護用浴槽、ビールサーバー、自動織機用制御ユニット、シーケンサソフトウェアなど大物製品まで、設計・製造の実績も豊富です。
試作から量産までのワンストップ対応で、生産体制の確実な立ち上げが可能
試作から量産までのワンストップ対応も、WILL ONEの特長です。
SMT実装ラインをはじめ、生産、評価・試験に必要な一連の設備を国内の自社工場に完備し、お客様の課題解決へ貢献するソリューションを提供いたします。
また、WILL ONEでは量産立上げに加え、アフターサービスも充実しています。
全国に拠点を持つウイルテックグループのネットワークを活用し、手厚いアフターサービスを全国で展開しています。物流の面では、メーカーの物流網を活用した迅速な輸送を実現。修理・保守の面では、ウイルテックのアフターサービス拠点に加え、全国のパートナー企業とも連携して、出張・持ち込み修理のサービスやコンタクトセンターによるトラブル対応などを展開し、万全の保守体制を実現しています。
幅広い技術力で「ものづくり」の競争力向上をサポート
また、WILL ONEには長年にわたって培ってきた幅広い技術力があるため、ものづくりにおける競争力向上をさまざまな観点から支援することが可能です。加えて、設計支援や部品の置き換えもサポート。既存の生産ラインを見直すことでコストダウンにつながるケースもあります。
当社のEMSソリューションの詳細について気になる方は、ぜひこちらのページもご参照ください。
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まとめ
多くの企業が人手不足やコストカットに悩んでいる現状において、EMSは解決策のひとつになり得るでしょう。とりわけ国内のEMS企業へ委託すれば、設備投資や人的リソースに関するコストやリスクを抑えつつ、高品質なものづくりを行うことが可能です。スタートアップで設備を用意するのが難しいという方や、コストの問題で生産設備の更新が難しいとお悩みの方は、EMSへの委託を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、WILL ONEでは、国内一気通貫で電子機器の設計から製造、試作品の評価や量産、出荷、保守修理までスピード対応しています。少しでも気になった方は、当社までお気軽にご相談ください。